横山FIRST活動サマリ
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手塚 勉(てづか・つとむ)産業技術総合研究所(東芝より出向)FIRST研究分担者1989年東北大学大学院理学研究科博士前期課程修了後、東芝入社。2001年よりひずみSi、新材料トランジスタ関連の研究開発を行う。2010年産業技術総合研究所に出向、FIRSTプログラム研究分担者。1994年応用物理学会賞(奨励賞)。博士(工学)。19FIRSTプログラム成果報告 ◎ 低電圧動作CMOSれるp型トランジスタを組み合わせた相補性金属酸化膜半導体(CMOS)回路が基本である。低電圧で高性能なCMOS回路をつくるためには、n型にⅢ-Ⅴ族化合物を使いp型にGeを使う組み合わせや、n型とp型の両方にGeを使う組み合わせが考えられる。さらに、SS値を低く保つためには、フィン型トランジスタなどの立体構造チャネルを採用することが有用である。 「このような理屈はだれもが考えることです。しかし、私たちは実際にそれぞれのトランジスタを開発して、さらに動作確認することで、いくつかの世界初や世界最高値の成果を得ることができました」と手塚氏は胸を張る。InGaAsトランジスタをSi基板上に形成 その一つが、n型トランジスタをⅢ-V族化合物のインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)でつくること。まず、量産工場の既存設備を適用できるように、InGaAs基板を使うのではなく、 Si基板上にInGaAsを形成する技術を開発した。 まず結晶格子の間隔が近いインジウム・リン(InP)を基板として、そこにInGaAs層を成長させ、絶縁体の酸化アルミニウム(Al2O3)層を堆積する。一方でSi基板は表面を酸化して絶縁体の酸化シリコン(SiO2)を形成する。 そして、Si基板のSiO2側とAl2O3側を張り合わせる。「絶縁体同士を圧着し熱を加えることで、質が高いInGaAs結晶の状態を保ちながら、二つの基板がくっつきます。最後に酸でInP層だけを除去して、Si基板上に絶縁膜を介してInGaAs結晶を形成できます」と手塚氏は説明する(図2)。InGaAsが絶縁体の上に形成されていることから、InGaAs-OI(on insulator)基板と呼ぶ。このウエハ張り合わせ工程は、産▶ n型TrにInGaAsを使い、移動度がSiの6倍以上およびSS値80 mV/桁以下を実証▶ p型Ge Trにn型InGaAs Trを積層し、CMOS回路の 0.2 V動作を確認(世界初)▶ p型ひずみGeナノワイヤTrで正孔移動度1922cm2/Vsを達成(世界最高値)▶ n型ひずみGe Trで、従来比4倍のオン電流値を達成(世界最高値)▶ 多結晶p型Geで、単結晶Siと同等の電流値を達成▶ 多結晶n型Ge短チャネルTrの動作を確認(世界初)図1 消費電力を10分の1にする原理図2 InGaAs-OI基板の作製方法総研の設備群を活用した。Geを使ってp型トランジスタをつくる方法の一つとして、同様の方法でSi基板上に高品質のGe結晶を張り合わせてつくったGe-OIウエハを用いた。基本構造は3次元構造のフィン型InGaAsで電子移動度をSiの6倍以上に InGaAs-OI基板上に、立体構造のフィン型のn型トランジスタを作製した。フィン幅1μmと20nmの二つを作製して特性を計測した結果、1μmの場合SS値が125mV/桁であったのが、20nmでは78mV/桁へと特性が向上した。InGaAs-OIにおいても、立体構造トランジスタによってSS値が向上することが実証された。 一方、フィン幅を変化させて移動度を計測したところ、35nm〜90nmの場合でSiと比較して約6倍となり、フィン幅が50nmの場合最大6.2倍に達した。SS値を低く保つためにはフィン幅をもっと狭くする必要があるが、そうすると移動度が下がってしまう。そこで、InGaAs結晶では(111)面が高移動度(Tr:トランジスタ)

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