横山FIRST活動サマリ
33/68

33FIRSTプログラム成果報告 ◎ ナノカーボン材料の開発と応用大学院修士課程を修了後、富士通研究所に入社した山田綾香氏は、その2カ月後に産業技術総合研究所グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(GNC)に出向となった。学生時代はメラニン色素の研究をしていたが、GNCに赴任してからは、グラフェンを透過型顕微鏡(TEM)で観察し、グラフェンの評価技術を確立した。評価結果を受けて、プロセス技術者と一緒に製造プロセスの最適化に取り組んだ。 TEM暗視像の回折パターンから結晶粒の方向を決め、多結晶のグレインマップを作製した。苦労したのはTEMで観察する試料の作製。水にグラフェンを浮かせて、TEMの観察基板に試料をのせるが、1週間ほど乾燥させないとうまく観察できない。試料が厚いと観察できないし、薄いと扱いが困難になる。ちょうどよい厚さを試行錯誤しながら決めた。 学生時代に顕微鏡観察をしたことはなく、研究者としての新しい経験を積んだ。「実験に必要な機器や装置が揃っていることが大学とは違います。また、入社して間もなく、同業他社や装置メーカーの研究者と交流できたのは貴重な体験でした」と語る山田氏は、今後研究キャリアを積み、博士号を取得する夢を抱いている。 現在は、2層グラフェントランジスタに電界をかけてバンドギャップを開く構造の開発にも携わっている。実際に電界をかけるのではなく、分子ドーピングをして等価的にかけて試している。グラフェンをトランジスタに応用するには、グラフェンと電極間の接触抵抗を下げる必要がある。東京大学の長汐晃輔准教授はこの課題に取り組んだ。 グラフェンと金属が接している部分では、電子は抵抗の低い金属側を通り、電極のエッジ近傍でのみグラフェン側に通ることが分かった。電極とグラフェンの接触面積を大きくしても接触抵抗は低くならないのである。 接触抵抗を減らすには、電子の律速原因となっているグラフェンの状態密度を上げる必要があった。シリコン半導体では不純物をドーピングすることで状態密度を高めている。しかし、グラフェンの場合、炭素原子同士の結合が強固なため、置換型ドーピングができない。 長汐准教授が着目したのが、グラフェンはニッケル(Ni)など特定の遷移金属と接触すると、ある軌道同士が化学的に結合し、グラフェンの状態密度が上がる現象。そこで、グラフェンに有機系のレジストを使ってNiで電極をつくり、接触抵抗率を計測した。すると予想に反しゲートにより大きく変調することが分かった。長汐准教授はその原因が疎水性相互作用によってレジストがグラフェンの表面に残ったためと考えた。そこで、レジストを使わずにグラフェン上に電極を蒸着できる装置を開発。金属/グラフェン清浄界面の特徴を明らかにし,最終的にグラフェンと電極間の接触抵抗率を、金属の選択によって50Ωμmにまで低減した。山田綾香(やまだ・あやか)産業技術総合研究所 連携研究体グリーン・ナノエレクトロニクスセンター特定集中研究専門員長汐晃輔(ながしお・こうすけ)東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻准教授TEM観察で苦労しながら、多結晶の島分布を解明グラフェンと電極との間の接触抵抗の大幅な低減に成功若手研究者の声委託研究者の声

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です