横山FIRST活動サマリ
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低電圧動作CMOSバックエンドデバイスナノカーボン材料の開発と応用44相変化材料におけるトポロジカル絶縁体の基礎研究及びデバイス応用Development of low power superlattice phase-change material and its processing technology for device applicationsれないが、経験を積んでくると、5〜10通りのシミュレーションでほぼ結果を出せる」と言う。 この超格子構造は、実はTeを立方体の頂点として、SbとGeがその間に入っている従来構造よりも安定であることが分かってきた。従来構造は-270〜200℃くらいまでなら安定だが、GeTe/Sb2Te3超格子はそれ以上の温度でも構造が安定である。つまり原子の配置が異なる結晶Aから結晶Bに相転移をする結晶そのものは溶けず、原子の配置が換わることが従来のPRAMと異なる。したがって余計なエネルギーをかける必要がないため、消費電力が下がる。Ge原子が対をなして格子の内側に入っている状態が抵抗の高い状態であり、二つのGe原子のどちらか、あるいは両方が外に出たときに抵抗が低くなる。この二つの状態は、電気的にも熱的にもスイッチできる。もともと2価のTe原子はマイナスの電荷、4価のGe原子はプラスの電荷を持ちやすいために、電気的にGeを動かすことはでき、電気的に書き込み、熱的に消去することもできるのだ。 実際にデバイスも試作している。Ge・Sb・Teの組成で合金化したものと、超格子メモリとで比較した。合金の場合は、6Vの電圧で、1.4〜1.5mAでスイッチングしたが、超格子では2〜3Vで0.4〜0.7mAという低い電圧・電流でスイッチングした(図2)。多くの素子をつくった結果、まだバラつきは大きいが、最も低いスイッチング電流として50μAを達成した。 消費電力をさらに下げるためには、スイッチング動作に寄与するGe原子の数を減らす必要があると富永氏は言う。動くGe原子の数が多ければ多いほど、エネルギーがかかるからだ。すなわち、Ge原子が移動するために生じるエントロピーをできるだけ下げるためである。実は、このことは新谷グループ(38ページ)の実験で証明されている。 この新型相変化メモリの基礎技術を応用した具体的なメモリLSIは、10社から成る超低電圧デバイス技術研究組合(LEAP)プロジェクトで300mmウエハを用いて試作が行われている。 メモリの書き込み消去の繰り返し回数を測定していたところ、10億回まで確認している。結晶を溶かさないのが、回数が増加したポイントだ。分野を超えたテーマトポロジカル絶縁体 富永グループの研究はこれだけではない。実は、この超格子構造が物理学会で大きなテーマになっている「トポロジカル絶縁体」であることが分かった。トポロジカル絶縁体とは、物質の表面だけに電気が流れる絶縁体材料のことだ。このため表面のエネルギーバンドはDiracコーンと呼ばれるギャップのない状態になる(図3)。 相変化メモリとしてのこの超格子は2年以上前に電気的特性評価も終了していた。「相変化メモリの基礎研究は終わったと思っていた」直後に、偶然手に取った論文で、トポロジカル絶縁体のことを初めて知った。 富永氏はまず、すでに試作している、超格子相変化メモリ材料(iPCM)のGe2Te2/Sb2Te3に0.1Tの磁場をかけてみると、従来のGeSbTe合金では何の変化も見られなかったが、iPCMのセット電圧と電流特性が大きくシフトした(図4)。この時の磁気抵抗は20倍変化した。FeやNiなどの磁性材料となる原子を一つも含まないのにもかかわらず、磁界に敏感に反応した。 iPCMの上下面はSb2Te3でできていて、トポロジカル絶縁体そのものだ。物理学会などで報告されたトポロジカル絶縁体は単結晶やエピ薄膜であり、超格子構造はない。今後、トポロジカル絶縁体の超格子構造を用いてその物性を調べ、解明を目指している。図2 予想通り、スイッチングエネルギーは少ない図3 トポロジカル絶縁体は表面だけギャップが閉じる

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