横山FIRST活動サマリ
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委託研究成果  物質・材料研究機構  物質・材料研究機構47 相補型金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタの動作電圧の原理的な下限値を破る新たなデバイスとして、インパクトイオン化MOS(IMOS)やトンネルFET(TFET)など、いわゆるSteep Slopeトランジスタの研究が活発化している。これらのトランジスタは、半導体中の衝突電離によるキャリア増倍やトンネル効果を動作原理に用いることが特徴であり、動作電圧の低減と同時に高いオン電流を得ることが実用化への鍵である。そのためには、インジウムヒ素(InAs)のようなバンドギャップの小さなIII-V族半導体の利用が有望と考えられる。 高性能IMOSの実現を念頭に入れながら、シリコン(Si)基板上に良質なヘテロ接合を持ったInAsナノワイヤ構造を高い制御性で形成できる結晶成長技術を開発した。 InAsとSiには約11.6%の格子不整合があり、しかも極性・非極性という異なる性質の結晶であるため、ヘテロ成長に伴う転位発生やアンチフェイズ領域の形成などの問題が存在する。しかし、近年有機金属気相成長法(MOCVD)による選択成長を用いてSi(111)基板上のSiO2マスク開口部に直径100nm程度のInAsナノワイヤ(NW)の成長を行うと、比較的良質なヘテロ接合が形成できることが報告されている。 ところが、Si表面のクリーニングや極性制御法が複雑なうえ、NWの形状制御に有効な成長パラメーターが必ずしも明らかでなく、Si上の広い領域で直立したInAs NWを再現性良く形成するのは難しい状況だった。 今回、MOCVDによるInAs NWの成長条件を詳細に調べ、比較的簡便に再現性良くInAs NWを形成する手法を確立した。また、InAsとSiの格子歪みは界面に平行なミスフィット転位の導入によって緩和されていることや、貫通転位もなく原子レベルで急峻なヘテロ接合の形成を確認した。 グラフェンは発見当初から、シリコン(Si)に置き換わり次世代高速エレクトロニクスを担うトランジスタ材料として期待されている。本研究では、グラフェンを電子デバイス材料に応用する際の二つのキーポイント、①高移動度、②バンドギャップの形成、に焦点をあて、基礎的な伝導現象の解明と制御を試みた。 化学気相合成法で成長させたグラフェン(CVD-G)の伝導度を低下させる要因は、点欠陥、表面汚染物質、線欠陥が挙げられる。輸送移動度の低下は、粒界によって引き起こされる欠陥に起因するものであることが明確になった。電子顕微鏡で粒界の存在を観察し、CVD-Gの多結晶性を示した。粒界のないCVD-Gを使った電界効果トランジスタの計測では、高品質剥離グラフェンに匹敵する輸送移動度が得られ、粒界に散乱要因が存在していることが明瞭となった。さらに、伝導の温度特性から、粒界を超える電気伝導はポテンシャル障壁モデルで説明できることが分かった。 また、垂直電界下の2層グラフェンにおけるバンドギャップの形成を試みた。アルミニウム(Al)をグラフェン上に直接蒸着することによって高効率のトップゲートを形成する方法を開発し、トップゲートと基板バックゲートを用いて2層グラフェンの垂直方向に高電界を印加した。電界印加時には2層グラフェンにバンドギャップ(最大0.2eV)が形成され、電界の大きさによって自在にギャップを制御し電気伝導を制御できることを見いだした。さらに、電界誘起バンドギャップを用いて、基礎的なロジック素子や電界効果制御トンネル素子などの原理検証を行うことに成功した。MOCVD選択成長を利用したナノスケールヘテロ接合の形成技術グラフェンの基礎伝導と2層グラフェンの電界誘起バンドギャップの研究物質・材料研究機構先端フォトニクス材料ユニット量子ナノ構造グループ佐久間芳樹グループリーダー物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点塚越 一仁主任研究者化学気相合成法で成長させたグラフェンの輸送移動度が低くなる理由は、粒界によって引き起こされる欠陥に起因する電界誘起バンドギャップ制御を実現した2層グラフェン素子。アルミニウム(Al)をグラフェン上に直接蒸着すると、界面に酸素が拡散して、グラフェン/Al界面に自己形成絶縁膜が形成される。このAl電極をゲート電極とする

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