横山FIRST活動サマリ
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54社会からの  期待Takuo Sugano 私は、東京大学を停年退官してから今までの22年間、いくつかの半導体関連の国家プロジェクトにかかわってきた。しかし、今回の横山FIRSTに関して直接的なかかわりはなかった。 2013年12月に開催された最終成果報告会に参加して、学術的にはトップレベルの成果だと感じた。特に、低電圧トランジスタ領域ではトンネル型電界効果トランジスタ(TFET)でSS値27mV/桁を達成したこと、ナノカーボン領域ではカーボナノチューブ、グラフェンを使って効率の良い排熱ができることを実証したこと、バックエンドデバイス領域では、相変化メモリの消費電力低減を目標値を上回る1万分の1にしたこと、が印象に残った。 まさに、急拡大している情報通信機器の消費電力を低減するために、大規模集積回路(LSI)の消費電力を10分の1~100分の1にする、という課題解決型研究の成果である。 また、課題解決型であるのと同時に、循環型研究でもあった点は、もっと社会で高く評価されるべきだろう。相変化メモリの低消費電力化の研究の過程で、超格子相変化メモリが、巨大磁気抵抗の性質とトポロジカル絶縁体の性質を持つことを世界で初めて発見した。つまり、新しい科学を解明するための題材を見つけたのである。 今回の成果は、産総研が所有するスーパークリーンルームの施設が大いに役だった。これまでの半導体関係の国家プロジェクトで整備した機器や装置を使うことができたからだ。大学が直接参画しないことも一つの方法 今回、研究参加機関に大学は直接かかわっていない。委託研究の形で連携しており、研究拠点である産業技術総合研究所に学生や教員たちが研究を実施するために集結することはなかった。このように、産総研が中心になって責任を持って実行していく体制も一つの方法だと思う。 課題解決型の成果は、個別の技術ごとに半導体メーカーに技術移転すると聞いている。半導体メーカーにとって、このような基礎研究段階での技術移転は、受け入れやすいのではないだろうか。既に半導体メーカーが個別に取り組んでいる技術であれば、個別の流儀が出来てしまうため、受け入れにくいからだ。 一方、循環型課題については、引き続き、国家プロジェクトで取り組むべきである。例えば、触媒の大きさでカーボンナノチュブ(CNT)の直径を制御する技術、トポロジカル絶縁体とスピントロニクス研究の融合などが挙げられる。 当初掲げた「2020年にLSIの消費電力を現在の100分の1にする」目標については、十分達成可能だと考えている。課題解決型と同時に新発見もあった循環型基礎研究であった1954年東京大学工学部電気工学科卒業、1959年同大学院博士課程修了、工学博士。1960年東京大学工学部助教授、1971年同教授。1991年同工学部長。1991年理化学研究所国際フロンティア研究システム、フロンティア・マテリアル研究グループディレクター。1992年東洋大学工学部教授、1993年同工学部長、1994年同学長。2000年同理事長。2011年 文化功労者。菅野卓雄氏東京大学名誉教授東洋大学名誉教授

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