横山FIRST活動サマリ
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55 産業技術総合研究所グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(GNC)では、サーバやルータなど情報通信(ICT)機器の消費電力を減らすために、大規模集積回路(LSI)の消費電力削減にいくつかの技術を開発した。具体的には、ゲルマニウム(Ge)やグラフェン、相変化カルコゲナイドなどの材料をLSIに使う要素技術の開発で、着実に実績を上げてきた。しかし、ここで研究開発を止めてはいけない。次は実用化に結びつける研究開発が必要である。 これまで日本で取り組んできた半導体関連の国家プロジェクトは、ハードウエアの要素技術や製造技術など、いわば「力」にのみ注目してきたため、実用化した時に差別化の源泉となる「技」が発揮できていなかった。また、GNCの成果を使用する場合は、従来のLSI量産工場に、これまで扱っていなかった材料を導入することになるため、製造ラインのコンタミネーション(汚染)やコストアップ要因となり、実用化に対する障壁となる。 さらに、LSIを使うシステム技術者側から、低消費電力動作のLSIを積極的に使う機運も乏しいのが問題だ。例えば、最近注目されている家庭内エネルギー管理システム(HEMS)では、優先度が低い機器の電源を切ることのみが基本で、低消費電力LSIを使って省エネを達成する発想がない。 したがって、GNCの成果を実用化に結びつけるためには、量産工場でどのような装置が必要なのか、製造コストや歩留まりなどももっと検討する必要がある。システム技術者が納得できる詳細なコスト計算と市場分析も必要だろう。今までは力で勝負してきたこれからは技が必要 コスト上昇に対する一つの解は、使い勝手を含めたソリューションを顧客に提供すること。つまり、力のみでなく技が必要だ。ICT機器の低消費電力を制御するファームウエアやデバイスドライバを提供すれば、システム技術者の理解も深まり、その応用も広がっていくだろう。 総合科学技術会議(CSTP)は、各省より一段高い立場で日本の科学技術政策の司令塔の役割を担っている。例えば、第4期科学技術基本計画および科学技術イノベーション総合戦略で掲げた取り組むべき課題を、CSTPの重要課題専門調査会下に設置した戦略協議会とワーキンググループ(WG)で議論している。GNCが取り組んできたナノエレクトロニクについては、ナノテクノロジー・材料WGから切り離し、LSIを使う側の議論ができるICT-WGへ移管した。今後、システム全体を見通した中で、エレクトロニクスの研究開発が加速することになるだろう。成果は着実に上がった実用化に向けた研究を続ける必要がある1977年東京工業大学大学院理工学研究科電子物理工学専攻博士課程修了、工学博士。77年三菱電機入社、中央研究所(現先端技術総合研究所)勤務、2003年先端技術総合研究所所長、06年常務執行役開発本部長、10年専務執行役半導体・デバイス事業本部長、11年代表執行役副社長、12年常任顧問。13年内閣府総合科学技術会議議員(常勤)。久間和生氏総合科学技術会議 議員Kazuo Kyuma

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